こんにちは。ライターのアイです。
コロナウィルスが流行し始めてから、次の春で丸2年になりますね。 長らく実家に帰れていないという人もいるんじゃないでしょうか。
ここ数年、Uターンを考える地方出身者が増えたと耳にしました。 「いつかは自分の地元で暮らしたい」 「都会に暮らし続ける必要性が分からない」
そんな思いを抱えている人はコロナ前にも多かったはずですが、このコロナの流行により暮らしや働き方が変わり、さらにUターンへの注目が大きくなってきているのではないかと思います。
飛騨出身の方々の中でも、いつかは地元に帰りたいという思いを持ちながらも、Uターンする決心がつかないという話も聞きます。
今回の記事では飛騨地域の中でも最南端の下呂市にフォーカスし、実際にUターンを実現された方へのインタビューと下呂市のUターン参考情報ご紹介します!
まずお話を聞いたのは、30年ぶりに下呂にUターンし、お父さんのお店を引き継いでリニューアルオープンさせたばかりのTさん。
お店は下呂温泉街から徒歩で5分ほどのところにあります。 2021年10月末までは、Tさんのご両親が営んでいた創業約60年の「よしろう食堂」という大衆食堂でした。 この11月にご両親からお店を受け継ぎ、Tさんが「よしろうと息子と 食堂」という名前で再オープン。
よしろう食堂は前述のとおり、Tさんのご両親が約60年前に始めた町の食堂。 近隣に暮らす方々にとってはなくてはならない存在と言っても過言でありません。 何十年も通っている方、子供のころからずっと食べてきたという方もいて、老若男女問わず、長く愛されてきました。 特に人気だったのが、焼きそばと中華そば。子供から大人まで、皆この味が大好きでした。
高齢のご両親に代わって、そんな愛されるお店を引き継ぐことになったTさん。 30年下呂を離れていて、どんな思いでUターンされたのか聞いてみました。
—―約30年という長い時間を東京で過ごし、どうしてこのタイミングでUターンしようと思ったんでしょうか。
Tさん:突然思いついたわけではなく、15年前、35歳の時に外食産業に足を踏み入れてからはずっと考えていました。きっかけとなったタイミングは、その前に3年ほど海外に暮らしていた時。遠く離れた異国で暮らす中で家族のことを思い出しました。親の幸せは何だろうと考えたときに、ただ下呂へ帰ることだけでなく、店を継ぐことが一番の幸せなんじゃないかと思ったのが大きなきっかけです。
35歳というまだまだ勢いのある年代で、両親のことを想って決意するってすごいことですよね。でもその決意を家族に伝えたときは、全く思いもよらない反応だったそう。
Tさん:まずは継ぐつもりという話を下呂市内に暮らす姉にしたんですが、『何で?』という反応で全然信じてもらえなかったんです。そこからどうにか分かってもらおうと、コンセプトを考えてレポートまで作って説明までしたんですけど、やろうとしてることを全く理解してもらえなくて。父も本当に帰ってくるとは最後まで信じてなかったですね。
確かに東京で就職し、海外で暮らすなど、どんどん広い世界に向かっていたTさんが戻ってくるというのはご家族にとっては驚きだったのかもしれません。
初めはご家族の理解はなかなか得られなかったものの、帰ってきた今では「好きにやってみればいいんじゃない」と応援してくれていて、やっと思いが伝わっていると感じるそう。
ご家族がビックリするのも無理はありません。Tさんがはじめて料理の世界に足を踏み入れたのは、なんと35歳の時。下呂を出て東京の大学の文系学科を卒業し、日本のIT企業へ就職。その後30歳を過ぎたころに海外へ行き、数年間現地の旅行代理店に勤めました。帰国して外食産業に入る前は、料理の勉強はしたことがなかったんだそうです。
—―外食産業では、どんなジャンルの料理をされていたんですか。
Tさん:外食産業で15年働く間に、イタリアン、フレンチ、和食と全く違うジャンルのお店で働きました。休日にはカフェやラーメン屋で働いて、食に関わる様々な分野で経験も積みました。スペシャリストを目指すのは自分には難しいと思っていたので、ジェネラリストとして様々なことができる料理人を目指しました。
様々なジャンルに携わった中で、フランスで修行されていた方や、三ツ星レストランに勤務していた方の下で働くという貴重な経験もされたそうです。
そしてちょうど50歳となる節目の今年、お母さんの体調の心配もあり、このタイミングでUターンすることを決意。 9月にUターンした後、お父さんからお店を引き継ぎ、11月18日にリニューアルオープしました。
先代のお父さんが営んでいた「よしろう食堂」は、中華そば、焼きそば、親子丼など「飛騨の町の食堂」のイメージぴったりの料理がメインでした。 Tさんに代替わりしてからは店名を「よしろうと息子と 食堂」に改め、飛騨の食材を存分に使った太麺しょうゆベースのラーメンとルーロー飯を提供。飛騨ではなかなか食べることのできないメニューですね。
——今お店をオープンして1か月ほど経ちますが、どんなお気持ちですか?
Tさん:自分のお店をやってる、自分が作ってるっていう感覚がないですね。あくまでも父のお店を間借りしているような感覚です。それにここは周辺の生産者が作った食材を集めて、それを美味しく食べてもらう場所だと思っています。
——店名も「よしろう食堂」から「よしろうと息子と 食堂」にリニューアルされましたね。
Tさん:この「息子」と「食堂」の間のスペースに生産者の皆さんや食べてくれるお客さんが居るという想いです。地域の皆さんに喜んでもらえる場所になればいいなと思っています。
地域の食材にこだわるのは、もちろん生まれ育ったこの地への思いけでなく、身近に美味しく新鮮な食材があるからこそ。
Tさん:このあたりで食材を探していると、東京で美味しい、新鮮と呼ばれている食材よりも、さらに良く、しかもそれがより安く手に入る。贅沢な環境だと感じます。
引退した先代のお父さんも、忙しい時間帯はお店のお手伝いにやってきます。
料理を作るTさんの隣で、見事な連携プレーでお父さんが材料を準備したり、お客さんにお食事を運んだりされており、カウンター越しに見る親子で一緒に働かれる姿はとっても素敵です。
お互いに料理人としてお互いを敬っているようにも感じ、見ているこっちがほっこりしました。
現在は昼営業のイートインのみですが、12月末から夜営業も開始予定です。夜はデリバリー、テイクアウト専門で、先代のお父さんの焼きそば、中華そばを復活させ、それに加えてTさんオリジナルの濃厚つけ麺や丼ものを提供する予定とのこと。
Tさん:デリバリーやテイクアウトのお店がまだまだ下呂には少ないので、この町に住んでいる方の選択肢が増えるといいなと思っています。
お話を聞いていて、ご家族のこと、地元の生産者さんのこと、そしてこの地域に暮らす人たちへの強い思いが本当にひしひしと伝わってきました。
ぜひ一度お店にも足をお運びください!
よしろうと、息子と食堂 住所:岐阜県下呂市森1367₋7 HP:https://www.geroyosiro.com/
今回、お店を新たな形で継いだTさんにインタビューしましたが、下呂へのUターンって実際多いのでしょうか? この点は、多いか少ないかの実態を知るのは非常に難しいです。 その理由は、実際の統計があるわけではないから。
完全な移住であれば、移住の相談などで市役所が把握していることも多いのですが、Uターンの場合は、家族や知り合いの既にいる生まれ育った地元に帰るので、事前の移住相談などに行かない方が多く、市役所でもUターンかどうかを把握しきれていません。
そういった状況のため、Uターンへの思いを持っていても、情報を集めることが難しいのが実情です。
では、実際Uターン希望者はどんなところで情報を入手してするのでしょうか?
実は移住促進に向け、過去にもさまざまなイベントが行われてきました。一部をご紹介します。
1. 岐阜に新しい友達を!オンライン帰省交流会
中津川市、下呂市を中心としたUターン、Iターン経験者がオンライン上で登壇し、それぞれのテーマの部屋に分かれ、参加者が一緒に話をするイベントです。 主催は恵那市の一般社団法人サステナで、中津川や下呂を中心に様々な理由でUターンまたはIターンした方のお話を聞ける機会でした。
地元に戻って暮らしたい方、家業があって仕方がなくいつか帰らないといけない方、都市部でのいまの生活に満足していない方、、、さまざまな事情の方がいると思いますが、違うパターンのUターンの方と話せる機会でもあったので、このイベントは好評だったそうです。
2. 温泉郷(フロサト)
2018年にスタートした都市部と下呂市をつなぐ交流イベント。
下呂市への移住定住のサポートをする下呂市役所市民活動推進課が主催しています。2019年までは東京で開催していましたが、2020年からはオンラインでの開催となっています。
こちらのイベントでは、下呂の特産品の魅力をお伝えするとともに、移住定住に興味のある方に向け、Uターン、Iターンの方をゲストスピーカーとして呼び、実際の暮らしや移住までの経緯などをお話を聞くことができます。
今後の詳しい予定は未定ですが、開催予定とのことなので、是非参加してみてください。
Iターンに限定した移住定住支援は下呂市ではありませんが、どのタイプの移住であっても要件を満たせば利用できる支援がいくつかあります。
・住宅購入時 ・2年間の一部家賃助成 ・東京県からの移住支援金
どれも細かく要件があり、それを満たす必要がありますが、移住定住に下呂市も力を入れていることがよく分かります!
移住定住支援 https://www.city.gero.lg.jp/site/ijyu-teijyu/list25-68.html
下呂市では市民活動推進課が移住定住促進の取り組みをしています。
問い合わせ先: 下呂市役所 市民活動推進課 電話番号:0576-24-2222 担当者:船坂さん
どこで暮らすか、何をするか、様々な選択肢があるからこそ、逆に決めるのは難しいかもしれません。
でも今回の記事が下呂へのUターンを考えつつも悩んでいる方、いつかはUターンしたいとお考えの方へ少しでも参考になればいいなと思っています。