私は、2016年の7月に妻と4人の娘と共に、北海道千歳市から白川郷(白川村)に移住しました。
当時仕事の関係で岐阜県に移住することは決めていたのですが、岐阜県のどの地域に住むべきなのかは全く情報が無く悩んでいました。
引っ越し先を決める際に重視したのは、子どものための教育環境です。
私の希望は、「生徒数が多すぎず、少なすぎず、小中一貫で、いじめがなく、のびのびとした環境で子育てができる場所」でした。
岐阜県の教育委員会に直接問い合わせると、担当の先生は迷わず白川郷学園を紹介してくださいました。
白川郷学園は、平成26年より全国でも先駆けて「コミュニティスクール」に認定され、その後平成29年には岐阜県で初の「義務教育学校」に認定されています。
「コミュニティスクール」とは、学校や保護者、地域社会が一体となって教育をサポートするといった仕組みで、白川村では特定のPTAの役員のみが学校教育に携わるのではなく、どの親も自分の得意分野のことで学校教育に貢献し、親子や家族単位で活動をする機会がとても多く、実際に私も移住した翌日から、地域の清掃活動や文化行事などに参加をさせていただき、より子どもたちの教育や成長を間近で見ることができ、家族の想い出も多く残すことができました。
地域が一丸となって、子どもたちの成長を応援し見守る白川村は、子育てにおいて理想的な環境だと思います。
次に白川郷に移住するに当たって、最も気になるのは日本有数の豪雪地帯と呼ばれる冬の雪事情です。
北海道に住んでいたこともあり最低気温などは北海道の方がかなり低く、雪には慣れているつもりでしたが、白川郷の雪は北海道、特に内陸部の軽い雪と違ってずっしりと大変重く、雪かきは想像以上に大変でした。
今も除雪機を買うべきか迷っていますが、1人で雪かきを頑張っていると、近所の方や娘と同級生のお父さん達が重機をもってきて手伝って下さり、助け合いの「結(ゆい)」の文化が根付いている白川郷の人々の心の優しさが身に沁み、大変な冬も乗り越えることが出来ます。
移住して最も衝撃的だったのは、豪雪でもなく、世界遺産のかやぶき屋根の家屋でもなく、毎年10月に開催される約1300年の歴史を持つ「どぶろく祭り」でありました。
どぶろく祭りは「五穀豊穣を神様に祈願し、白川村の5つの神社で神事、獅子舞、民謡や舞踏などが披露」されるもので、それぞれの神社ごとに地元の小学生から高齢者に至るまで、全員参加型の一大イベントとして村民が力を合わせます。
各神社でそれぞれの地区のメンバーが獅子舞や民謡を披露するので、白川村に移住してすぐに当時中学2年生だった次女にも民謡踊りの猛特訓が開始されました
。
断るという選択肢もあったかもしれませんが、娘は何とか猛特訓を重ねて本番に出させて頂くことができました。もちろん完璧という訳ではありませんでしたが、その一生懸命な姿に、親としてとても感激したのを今でも強く覚えております。
現在21歳になる次女に当時の経験を聴いてみると、次のような感想が返ってきました。
「当時は北海道と飛騨地域の文化の違いに戸惑ったものの、今思えば本当に貴重な経験ができたと思っています。なかなか民謡踊りの振り付けが覚えられず、皆さんにも迷惑をお掛けしましたが、忍耐強く最後まで教えて下さった先生方に心から感謝をしています。一番、嬉しかったのは、民謡踊りの際に、おひねりを沢山頂いたこと。自分の踊りが人に評価され、喜んでもらえたことが今でもとても印象に残っています」
観光地として有名な白川郷ですが、四季の移り変わりと共に、本当にガラリとその風景が変わります。
毎日散歩しても、その景色に飽きることが無いほどに、日々花々が観る者を楽しませてくれます。白川郷はもともと水が豊富に湧き出ることでも有名で、至る所に小川が流れ、その清流に真夏でもどこか涼し気な気分になることができます。
そんな美しい白川郷や飛騨の風景を毎日動画に記録するのも日課になっています。自らの運動のためにも散歩がてら撮影を始めたのですが、観光客が見向きもしないような地元目線の絵を探してはYouTubeに紹介しています。
白川郷をはじめ、飛騨地方は豊かな自然と1000年以上前から育まれてきた日本古来の文化が根付いており、厳しい自然環境の中にありながら、「結」の精神で心と心が固く結ばれ、いつの間にか失ってしまった『日本人の美学』が自然と当たり前のように存在しているように感じます。
もちろん楽なことばかりではないですが、日々多くのことを学び、人生を豊かにしてくれるような、そんな白川郷での生活も8年目。
子どもたちも成長し、今では四女のみが白川郷におりますが、その四女も数年ぶりのどぶろく祭りの開催に期待で心を弾ませております。