100%田舎の飛騨「でも」できること・飛騨「だから」叶うこと vol.2

今回取材した、ひさだまりこさん。老舗食事処にお嫁さんとして嫁いで12年。彼女が新たに始めたチャレンジとは?

この連載は、飛騨地区に移住や結婚をきっかけに移り住むことになり、そしてこの飛騨の地で会社の起業や、新しい活動を始めた人の現在を取材していきます。100%田舎の飛騨で、飛騨「でも」できること・飛騨「だから」叶うこと。そこにはどんな暮らしが隠されているのかを聞いてみました。

 

世界中を回り建築について学ぶ日々

大阪出身。京都の大学で建築について学び、NGOにインターンで参加していた。ちょうど、イラン・イラク戦争の戦後復興支援でイランやアフガンにも赴き、武器庫にされていた場所を学校に復興する事業にも携わっていた。またタイ、ベトナム、ラオス、カンボジア、中国などをバックパッカーとして世界を回りながら、建築を見て見聞を広めた学生時代。社会人になってからは建築事務所に勤めながらも、京都にあるNPOで「昔ながらのいいものを残す」町家建築についても学んだ。通勤では毎日満員電車に揺られ、仕事が遅くなるので子供は預けっぱなし。流れるように過ぎていく毎日に違和感を感じ出したころ、飛騨高山のご主人の実家の家業を継ぐため飛騨にUターンすることになった。

※ご主人の実家は、飛騨高山のメイン観光地「古い町並み」の中にある。江戸時代は宿として栄え、今は老舗の食事処として連日多くの観光客をもてなしている。

 

暗黒の2年間…

飛騨に引っ越してからの約2年間は暗黒の2年間だったという。

住みなれない町と、ご主人の実家の商売の手伝い。知り合いがいない中での息子の保育園デビュー。そして2人目の妊娠と出産。今まで当たり前にあったものが、ここにはない。スタバもなければ百貨店もない。そう感じる毎日で自分らしさをどんどん失っていった。

 

きっかけは味噌づくり

「ないもの」探しばかりしていた自分に気が付き、「あること探し」をすることにした。

そのきっかけは知り合いに教えてもらった「味噌づくり」。スーパーで売っているのが当たり前の「味噌」が自分たちで作れることを知った。これを機に、自宅の梅の木になる梅を使って、梅干しや梅ジュースを作ってみた。その年の気候によって出来栄えが変わるという当たり前の物に気づき、見えてくる世界が変わっていったという。

※子供たちも一緒に味噌づくり。梅干しは作る人によって、赤色の出方が違うことを知った

 

 

ひさださんが気づいた「飛騨にあるもの」は他にもある。

・飛騨はちゃんと夜が来る。夜は暗くて、朝になると明るくなる。ネオンに包まれた都会では暗さに気がつかなかった。

・ちゃんと1日が終わる。眠らない町なんて言葉はここにはなく、1日が1日としてしっかり終わっていく。

・春夏秋冬の生活や、食のサイクルがあり、みんながそれを大切にし、自然と共に生きている。

都会では見失ってしまっている、自然のサイクルに沿って生きている飛騨の暮らしは、ライフワークバランスがしっかりとれていて「人間の根っこ」の部分が強いことに気が付いた。

 

陰ヨガとの出会い

35歳で子供を出産した後、体調を崩した。それまでの生活を振り返ると、やらなきゃいけないことに惑わされ、自分らしさを完全に見失っていた。子供のため、仕事のため、実家のため…。そのとき出合ったのが「陰ヨガ」だった。単に体を動かすだけのヨガとは違い、人間が持つ「陰」と「陽」を自分自身が理解しする。そして自分自身が根っこ(陰)と表面の(陽)のバランスを理解することで、身体と心のバランスも整えていくのが「陰ヨガ」である。

詳しく学べば学ぶほど、この根っこ(陰)は自分自身がしっかり診て、理解してあげる必要があることを知った。都会では表面(陽)に振り切る女性が増えてきており、根っこ(陰)がやせ細ってしまっている。一方飛騨の暮らしは根っこ(陰)がしっかりしている。「飛騨の女性は根っこが強い」ということを自ら気がつくことで、もっと自分らしく生きられる。それを伝えるために、「陰ヨガ」のインストラクター資格を取り、現在では、「陰ヨガ講座」を自らの生業としいる。

100%田舎の飛騨「でも」できること

「ないもの探し」をし始めたらキリがないない。

でも「ないもの」は生きていく上で「なくてもいいもの」だという気が付いた。

むしろ「できること」の方が多い。

 

100%田舎の飛騨「だから」叶うこと

飛騨で暮らして、たくさんの気付きがあった。それはきっと、この町が教えてくれた「叶えたい自分と家族の姿」だった。

・本来の自分に戻れる。自分のあり方を考えさせられ、気づくことができる。

・本来の自分のままでいいんだよ、と受け入れてくれる優しさや温かさが飛騨にはある。

・ライフスタイルが柔軟で、自分で生き方を考えることができる。そしてそれを受け入れてくれる人がいる。

・町中から「暮らし」と「豊かさ」を感じる。

・子供たちを地域の人が育ててくれる。そして、子供たち自身も「自分が大切にされている」と実感できている。

・春夏秋冬、季節の食材を旬の時期に、旬の味として食すことができる。

今回インタビューをしている私は、飛騨出身でありながら、飛騨の暮らしの中にある当たり前な出来事1つ1つにパワーの源があることなど考えたこともなかった。ひさださんのお話しを聞いて、あらためてこの飛騨の暮らしの素晴らしさに気づくことができた。

【今回の取材:飛騨で新たなチャレンジを始めた人】

・ひさだまりこさん

・古い町並 久田屋:http://hisadaya-hida.com/

・陰ヨガ ブログ:http://yinyogasoramachi.hida-ch.com/

・公式Instagram: https://www.instagram.com/marikohisada_yinyoga/?hl=ja

 

 

長瀬 欣子(2017年度ライター)
長瀬 欣子(2017年度ライター)

岐阜県高山市出身。子供の成長をきっかけにUターン。現在は東京に本社のある会社のリモートワークシステムを活用し、自宅を事務所とした仕事展開。飛騨に住みながら月に数回、東京・名古屋に出向くワークスタイルを実行中。

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