温泉と暮らしの秘密を大公開! 日本三名泉、下呂温泉のある岐阜県下呂市の楽しみ方

岐阜県下呂市は、日本三名泉の一つと呼ばれる「下呂温泉」で有名な温泉の街です。飛騨地域の最南端に位置し、名古屋からJR特急で北に1時間半、飛騨高山からはJRで南に1時間ほどという、なかなかアクセスの良い場所にあります。

温泉と自然に囲まれて、のんびりと暮らすことができますよ!ちなみに、飛騨地域の中では一番降雪量も少なく、ハードな雪かきが比較的少ないところも移住者にとっては魅力的。

そんな下呂市内には、下呂温泉エリアだけでなく、温泉を楽しめる施設がたくさんあり、市民も気軽に日帰り温泉を楽しむことができます。下呂に引っ越してきて1年半の私も、友人から「下呂温泉に住んでいて羨ましい!」と言われることが多いのですが、日帰り温泉以外の利用方法をよく知りませんでした。せっかく温泉の街に住んでいるのだから、全国の温泉好きも羨む下呂だからこその温泉の楽しみ方はないのだろうか・・・。 そんな疑問を解消すべく、下呂に住んで1年半、東京出身の田口とUターン2年半の田中の2名が取材をしました!蓋を開けてみるとなかなかユニークな下呂市民の温泉活用法を垣間見ることができましたので、ご紹介していきます。

1-1 下呂市民は自宅で温泉に入ります。温泉スタンドはこんなところ

下呂温泉のある岐阜県下呂市には温泉を販売している「温泉スタンド」があります。これ全国的にも、とても珍しいスタンドです。

下呂温泉の成分表
自宅の浴槽に合わせて200リットル・300リットルと選べます。

管轄は「下呂温泉事業協同組合」 早速お電話して状況をお聞きしました。

利用資格⇒下呂市民であること 利用手順⇒組合事務所にて申請書に記入するだけで利用可能 必要な道具

  • 大きな容器を乗せる軽トラックかバンタイプの車
  • 温泉を入れる大きなタンク(8,000円~20,000円程度)
  • タンクから浴槽へ温泉を移すための水中ポンプ(10,000円~30,000円程度)大きなタンクや水中ポンプはホームセンターやネットで購入できます。

参照↓ 外部リンク1 外部リンク2 外部リンク3

一日の利用者⇒冬期約160人(夏期は少し減る) 利用者の傾向⇒毎日くる方が多い

利用を検討している方は

「下呂温泉事業協同組合」 〒509-2206 岐阜県下呂市幸田1165-3 ℡0576-25-4648

へお問い合わせください。

1-2 下呂温泉スタンドを利用している地元の方を取材してみました

~下呂生まれ下呂育ち生粋の下呂人・遠藤さんと田口さんの話~

〔遠藤さんの話〕

温泉スタンドが始まった一年後から利用を開始し約40年。その後は一度も自宅の浴槽でお湯を沸かしたことがないといいます。 温泉スタンドのいいところをお聞きすると、毎日リゾート気分、湯冷めがないから入浴後も体がぽかぽか、肌がしっとりつるつる、ボイラー代が必要ない、たまに外出先で水道水のお風呂に入ると違いを感じる、やっぱり下呂温泉はいいなと思うそうです。 温泉スタンドまで来る事は大変かなと思いながら、実際に温泉を汲むところに同行させて頂きました。

温泉スタンドに向かったのは夕方4時半ころ、一番混む時間帯で、3カ所ある汲み場はフル回転でした。 温泉スタンドの前は一方通行。スタンド南側から入るのが正式だそうです。北側は退出方向ですので初めて行く方はご注意ください。

さあ、スタンドについたら、タンクの蓋を開けます。ホースを差し込み

コインを投入し3秒後にお湯が出ます!

だんだん温泉が貯まってきています。

タンクの中を撮影しようとしたらカメラ曇ってしましました。

はい!満タン200リットル入りました。

スタンドについて温泉を汲み終わるまでおよそ3分。あっという間! え!?もう終わり?と遠藤さんに聞いたくらい、すぐに温泉が貯まりました。 立ちこめる硫黄臭と温泉スタンドの独特な雰囲気にワクワクしましたよ。 その後は蓋をして自宅へ。

自宅についたら、登場するのが水中ポンプ・タンクの中へ沈めてスイッチon!するとぐんぐん温泉は吸い上げられていきました。

温泉の温度を測ったら「53℃」熱いですね。

遠藤さんの車庫には温泉を貯めておくもう一つのタンクがあり温泉がいったんストックされます。

今はご夫婦二人暮らしなので1回分200リットルで足りますがご両親がご健在でお子さんがいたころは最大で7人家族。1回分の温泉では足りず、2回分貯める必要があったため予備のタンクを作りました。 (現在は息子さん家族がお盆や正月に帰省されるとき、予備のタンクがとっても重宝しているそうです)

水中ポンプで汲みあげること約7分。 こちらもあっという間に空っぽ。 温泉が車庫の予備タンクに移動しました。 予備タンクがあるお宅は珍しく、通常は軽トラをお風呂場の窓近くに停めて直接ポリタンクから水中ポンプで汲みあげて温泉を移動させる場合が多いそうです。

さて、遠藤さんの自宅の予備のタンクを経由した温泉は、浴室の配管につながっています。

配管からホースが伸びて浴槽へ。 これで温泉の旅も終わります。 蓋をして、2から3時間後に適温になります。 (早く入りたいときは、お水で薄めたりする事も)

毎日お風呂に入る時間を逆算して汲みに行っているそうです。 入浴中は頭を洗うのも体を洗うのも温泉水を使用しています。なんて贅沢な温泉活用ライフでしょうか。

〔遠藤さんからのアドバイス〕

「ポリタンクを買うときはワンサイズ上を買う事をお薦めします」と。 温泉スタンドで200リットル買うと、実際は200リットルと少し多めに出ます。 200円入れて300リットル温泉を買うと300リットルと少し多めに出るそうです。 自宅の浴槽が200リットルだから200リットルのポリタンクを買うと汲んでいるとき温泉があふれてしまう可能性があるのでワンサイズ上を買うことを薦められました。

そしてもう一つ、「大きなポリタンクがなくても、軽トラックがなくても温泉を買える方法があるよ」と。 それは、灯油を購入するときに使うような18リットルや20リットルのポリタンク専用の汲み場があり、乗用車でもなんとか10個のポリタンクが乗るスペースがあれば温泉を購入する事ができます。これは嬉しい情報です。 大きなタンクや水中ポンプがなくても、人力で運ぶ事ができるなら、こちらもお薦めされました。 20リットル容器用の購入は通常の温泉スタンド向かって右手、下呂温泉事業協同組合事務所の西側です。

通常の温泉スタンドより少し割高ですが、200リットル買えます。 温泉が出るホースも細めです。20リットルのポリタンク10本分!人力で運ぶよという方はチャレンジしてみてください。

田口さん↑

田口さんのこの余裕。タンクじゃなくて外の景色みてますよ。 感覚で何分目まで入っているか分るんですね。

〔田口さんからのアドバイス〕

「大きなポリタンクは「スイコー」製がお薦めだよ」

温泉はアルカリ性なのでプラスチックの傷みが早いそうですがこのスイコーは丈夫で長持ちするそうです。

もう一つは「水中ポンプを使わなくてもタンクから浴槽に温泉を移動する方法があるよ」 と。 はじめ浴槽側のホースの端に少しだけ水道水を入れてホースの中に圧をかけるとポリタンクの温泉がホースを移動し始めます。 これ、サイフォンの原理を利用しています。

〔サイフォンの原理とは〕

隙間のない管を利用して、液体をある地点から目的地まで、途中出発地点より高い地点を通って導く装置であり、このメカニズムをサイフォンの原理と呼ぶ。 (ウィキペディアより)

だから田口さんの自宅はホースの穴が下の方にあるんだと納得しました。 下呂の方は当たり前なのかも!すごい。 水中ポンプなしで温泉を移せることは画期的だと思います。

〔おまけの画像〕

温泉スタンドで見かけた保温ケース付きのポリタンク

温泉スタンドから車で30分以上離れた地区からも汲みに来られます。 テントの用のシートを加工したり木箱に発泡スチロールをはって保温機能を保ったり、温泉を大切に運びたいという地元の方の思いが伝わります。

〔おまけ情報〕

地元のホームセンターに容器について聞いてみました。 私達がよく利用しているホームセンターバロー萩原店電話しました。

きいてみると、 コダマ社製を扱ってました。 今日現在の在庫は

200リットル容器 6,982円税抜き

300リットル容器 9,073円税抜き

でした。

耐熱温度は特に気にしたことないですが、温泉スタンド利用の方はこれを使ってますよとのこと。

また水中ポンプも、10,000円位の物は実は温泉用ではないそうです。 ホントに温泉用のポンプだと10万くらいするらしい。 メーカーも高温に対して保障してないのであとは!お客様の責任で使って下さいねとお伝えしてますということでした。

2. 炭酸泉を食用に使う!

下呂温泉街から車で30分北上すると、下呂市の最北端飛騨小坂に到着します。

こちらでは下呂温泉と水質の全く違う「高濃度天然炭酸泉」を楽しむことができます。飛騨小坂観光協会によると天然炭酸泉とは「天然に炭酸を含んだ温泉のこと。全国に多数ある温泉地の中でも天然炭酸泉は2%。その中でも高濃度天然炭酸水は0.5%と非常に希少な温泉」だそうです。茶褐色の湯船に浸かるとプツプツとかすかに炭酸を感じ、お肌もツルツルになります!旅館や日帰り温泉施設もありますので、地元の方も日常的に入浴をしているのですが、この町の温泉の楽しみ方は入浴だけではありません。なんと飲泉ができる温泉なんです!江戸時代から「服用の湯」とも呼ばれ、胃腸の活動を改善する効果があると言われています。

では、現代の飛騨小坂では、どんな風にこの炭酸泉を飲泉として活用しているのでしょうか? それは、「料理」です! この炭酸泉を水の代わりに料理に入れることで、素材が柔らかくなり、まろやかな仕上がりになります。では、どこで温泉を入手できるのか?地元の方はどんな料理に使っているのか?をご紹介していきます。

① 飛騨小坂の飲泉場は2箇所。いつでも無料で持ち帰り可能!

飛騨小坂には湯屋温泉エリアと日帰り温泉施設ひめしゃがの湯の合計2箇所に飲泉場があります。今回は湯屋温泉エリアの飲泉場に行ってみました。 旅館が点在する地域に突然登場する飲泉場。

飛騨小坂の飲泉場はなんと無料!無色透明の温泉がすごい勢いで流れ出ています。触ってみると、少し鉄の香りがする冷水で、ぬるっとするような印象。

早速、持参した空のペットボトルに温泉を入れます。

すごい勢いで水が溢れ出るので、置いてある漏斗を使ったらすぐにペットボトルはいっぱいとなりました。炭酸泉は入れたての状態では、無色透明ですが、時間が経つと茶褐色に変化します。

飲泉場はいつでも利用することができます。気軽に汲みに行けるので地元の方が利用していますが、観光客も利用することができますよ!

②飛騨小坂のお母さんの炭酸泉料理を学ぶ!

飛騨小坂の旅館や飲食店では、この炭酸泉を使い、炭酸泉湯豆腐を提供しています。 炭酸泉湯豆腐は炭酸泉の力で豆腐の角が取れ、まるで豆乳鍋を食べているようなまろやかな仕上がり!火を通すと鉄っぽい炭酸泉の味が不思議と消えるんです。

地元の方々はどんな使い方をしているのだろう・・・?と疑問に思い、早速飛騨小坂に暮らして20年の地元のお母さんのお宅へお邪魔しました。 ご自宅で炭酸泉料理を作ってくれたのは、美濃市出身の皆越真佐代さん。

皆越さん自身も飛騨小坂に引っ越されてから炭酸泉を知り、こんなに素晴らしいものが無料で使えるなんて!と驚いたそうです。今回炭酸泉を使った黒豆煮と天ぷら、味噌汁を作っていただきました。

・黒豆煮

黒豆を煮るときに、水でなく炭酸泉を入れ、砂糖を少し入れて煮るだけなんだそう。炭酸泉の成分で豆の黒色が綺麗に出るだけでなく、炭酸泉が持つ鉄分が働くのか、水で作るときよりも砂糖の量が少なくても甘みが出るそうです。 食べてみると、とにかくまろやかで素材の味が引き立っているように感じました。とにかく箸が止まらない!美味しい!優しい味!

・天ぷら

天ぷらを揚げる際、一般的には衣は天ぷら粉と水を混ぜますが、水でなく炭酸泉と氷を入れます。その衣を野菜に絡めて揚げたかぼちゃの天ぷらとかき揚げを頂きました。

出来上がった天ぷらはカラっと揚がっていて、食べるたびにサクッ!サクッ!と美味しい音が!箸が止まりませんでした。皆越さんによると、ベチョっとしてしまいがちな天ぷらが、炭酸泉を使うことで綺麗にサクッと揚がるとのことです。

・味噌汁

炭酸泉を使って作った味噌でお味噌汁を作っていただきました。(味噌汁の水には通常の水を使っています。)味噌は皆越さん自身の手作りだそうで、大豆を煮る際に水でなく炭酸泉を使ったとのこと。この味噌で作ったお味噌汁は、見た目こそ通常のお味噌汁と変わらないようですが、少し甘みがあり、優しい味です。帰り際にお味噌を分けていただいたので、自宅に帰ってから私の手作り味噌と食べ比べをしましたが、やはり皆越さんの味噌の方が甘く柔らかいお味でした!

その他にも、カレーやビーフストロガノフなど煮込み系の料理にも使うとお肉や野菜が柔らかくなり美味しくなるそうです。使用する鍋は、炭酸泉の成分によって傷がつかない土鍋やステンレスを使ったほうが良いそうなので、ご注意ください。

今回取材する中で、汲んだ炭酸泉を毎日そのまま飲んでいたら10キロ痩せた!というご意見も寄せられました!(あくまで個人の感想で、効き目には個人差があります。)個人的には汲んだままの炭酸泉は、鉄のような味がしてそのままでは飲みづらいので、料理に使うことをオススメします。飲泉場によっても少し味が違うので、一口飲んでみるのも面白いかもしれません!

最後にご注意いただきたいのは、同じ下呂市でも下呂温泉は飲泉場・飲料用の温泉はありません。飲泉場があるのは天然炭酸泉の飛騨小坂です。お間違いなく!

まとめ

温泉は今まで車や電車で、1~2時間かけていくところと思っていました。 いまは車で4~5分でいける暮らしになりました。 観光客の方が喜んでくださることと合わせて、市民も入浴したり、料理につかったりして温泉の恵みを受け取っています。

今回、取材した3名の方から「温泉と生きる」方法を学んだので、移住1年半の田口とUターン2年半の田中は温泉の街で面白楽しく生きるぞ~と思ったのでした。

田中晃子/田口愛
田中晃子/田口愛

■田中晃子
下呂市萩原町(旧益田郡萩原町)生まれ。高校まで萩原町で過ごし、進学と同時にいったん地元を離れました。その後24年は尾張や美濃地方で過ごし、現在はUターンして下呂市に住んでいます。好奇心旺盛で何でもやってみたいタイプ。ライターのお仕事も楽しそう~!という理由で始めました。一度、地元を離れたからこそ分かる下呂や飛騨の魅力をお伝えしたいと日々過ごしています!

■田口愛
1986年東京生まれ。夫の祖父母の家を継ぐことになり、2018年に住み慣れた地元東京を離れ、生後6ヶ月の息子と共に家族で下呂へ移住。企業の海外事業サポートやライター業、翻訳などをしながら、自分に合った働き方・暮らし方を模索中。着物が大好きで、アンティーク着物のコレクションを眺めながらニヤニヤするのが至福の時間です。下呂の生活にはまだまだ驚きや新しい発見がたくさんあります!

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