移住者や、新しい起業家は魅力的な人も多いが、親子何代も飛騨で生業をしている人達がいます。そんな飛騨にゆかりのある人達が何を考えて、何をしているのかを、自分も印刷会社の5代目になる私、住(すみ)がインタビューしました。こんな素敵な人達と組んで何か始めるのも面白いかもしれません。
「自分で16代目になる、酒造りの会社です」と話す、二木公太郎(にき こうたろう)さんは、二木酒造株式会社の代表です。
スッキリとした飲み口が人気の「氷室」などの銘柄をつくっています。
飛騨高山の古い町並みという伝統的な地域に面している玄関を抜け、普段仕事をされている社長室でお話を聞きました。
「中学生くらいから家業を継ぐことを意識し、高校まで高山で過ごしました。
農業系大学の醸造学科で学び、福井の酒造で経験を積んでから、家業を継ぐため24歳で帰ってきました。
今思えば、親や周りからの刷り込みで、家業を継ぐのが当然と思うようになっていたのかもしれません」
二木さんは、中学生というかなり早い段階で家業を継ぐことを意識し、
そのためにどんな経験を積めばよいかを考えて生きてきたようです。
「酒造りについては、当たり前のことを当たり前に行い、清潔で丁寧な商品づくりを心がけています。
奇をてらうことなく、過去から脈々と続いてきたことを、しっかり行っていくことも大切にしています」
二木家には家訓が書面で残されており、大切にすることが細かく書かれています。
その家訓にのっとり、しっかりやることはやる。
当たり前のことを日々継続することは、実はとても難しいことなのだと二木さんの話を聞きながら感じました。
飛騨高山には、旦那衆という言葉があります。
旦那衆とは、高山祭の屋台等も含め、飛騨高山の文化を伝承し、発展させてきた人たちのこと。
二木さんの家系も、代々旦那衆という見方をされてきたそうです。
「昔はこの地域に住んでいるから、旦那衆という意識を持っていたのかもしれませんが、
今の自分たちにはそんな認識は特にないというのが本音です。
ただ、昔の旦那衆というのは、芸事や遊びの様な文化的教養やマナーから、
一歩踏み込んだ礼節がしっかりできる知的教養レベルの高い人だったのでは、と考えています。
旦那衆にはなりたいと思いませんが、そんな礼節のしっかりできる、知的教養の高い人間にはなりたいと思っています」
そう話す二木さん。筆者からは、とても知的教養の高い方であると感じました。
「基本的に自分は、考え方が柔軟な方だと思っています。
だから、基本的には時代にあわせて何でも変えていっていいと思います。
ただ、ここだけは守っていく必要があると思っているのが、会社でいえば酒造りをすること。
そもそもの事業の存在理由は変えずに行っていきたい。
また、この地域でいえば町並みの維持・管理・保存をし、古いものをしっかりと残すこと。
それは変えてはだめだと思っています」
二木さんは、変えない軸をしっかり持っています。
一方で、それ以外はなぜ今までそうやって来たのかという理由を探り、理解し、
今はこのほうが良いのではないかと提案し、時代にあわせていくことが大切だと考えていました。
古い町並みは、自分たちの世代が、100年、200年と維持できる修繕をしていく事が大切だと熱く語られました。
「ひとりでは伝えられないことやできないことも、集まる場や仲間があれば、実現可能だと思っています。
極論をいうと、これから自分がどれだけ楽しめるかということを意識しています」
二木さんは、会社の他にもHALという飲食の会社(カフェ、スナックの2店舗)でも活動しています。
過去に高山青年会議所で一緒に活動した仲間と会社をつくり、2拠点で2人の社員を雇っています。
高山青年会議所は、明るい豊かなまちづくりを目指す団体。40歳までの経営者層が加入しています。
その団体で、さまざまな事業の苦楽を共にした仲間と起業しました。
「過去に真剣に一緒に活動した信頼できる仲間と、自分たちが楽しめる場所、欲しい場所をつくるという実験をしています。
そんな姿を後輩にも見せていきたい」
そう話す二木さんは、さらに、TAPというイベント運営チームの活動もしています。
「現在、18人のメンバーで活動しています。
だれかのやってみたいイベントを、みんなで力を合わせて実行しています。
実はこれも高山青年会議所のメンバーが主体です」
「昔の旦那衆が芸子さんを自分好みに育てるというように、
今は地域を自分好みに育てるような動き方をしているかもしれない」
こう話す二木さんは、アイデアに対して、お金や能力を使って、
おもしろいものをつくりだしているクリエイターであると感じました。
「どんなことを楽しいとおもうかは人それぞれ。
全員、違っていいし、全部やってもいい。
何かをやりたい人の応援ができて、自分も楽しむ。そんな未来をつくっていきたいです。
移住者もウエルカムです。飛騨にとってはとってもいいこと、一緒に組んでやっていこう」
こんな16代目と、日本酒片手にこんなことがしたいという夢を語ると、一気に実現可能への道が広がるかもしれませんね。
会社情報 |
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二木酒造株式会社 |