移住者や、新しい起業家は魅力的な人も多いが、親子何代も飛騨で生業をしている人達がいます。そんな飛騨にゆかりのある人達が何を考えて、何をしているのかを、自分も印刷会社の5代目になる私、住(すみ)がインタビューしました。こんな素敵な人達と組んで何か始めるのも面白いかもしれません。
「飛騨高山で祖父の代から瓦屋を始めて3代目になります」
と話す森孝徳(もり たかのり)さんは創業65年になる瓦屋の代表です。元々彼は家業を継ぐ気はなく、東京都内の企業に勤めていましたが、その時に直面した家業存続の危機をきっかけに地元に戻る決意をし、家業の瓦屋を継ぎました。
「家業がピンチだと聞かされた時、それまでは考えたこともなかったような感情が湧き出てきて、自分が何とかしたい!という想いが強くなりました。とはいえ、飛騨へ戻った当初、家業の経営状況が厳しく、藁をもすがる思いで日々必死に仕事をしていました。うれしかったのは、そんな中でも『先代にお世話になったから車使っていいよ』と、祖父や父の人柄を慕って助けてくれる方の温かいサポートでした」
先代の積み上げてきた信頼もあり、森さんの事を慕ってくれる周りの方に支えられ、今では飛騨地域で約9割のシェアを持つ瓦会社に成長したそうです。
「飛騨地域でシェアをとってしまったら、先が見えた気がしてしまったんです。これからもっと事業だけでなく、自分も成長していく何かをしたい!という思いが胸の中に膨らんできました」
市場から瓦屋根が減っていく時代の中で、事業そのものの方向性を考えていくことは必須。ただ、自身が心底ワクワクできるような何かに挑戦したい、という森さんの熱い思いは、月日を重ねるごとに強くなっていきました。思いが先走るものの、すぐに実行には至らず、悩んでは悶々としている日々を送っていたそうです。
「そんな時にあのホリエモン(実業家の堀江貴文氏)が運営しているオンラインサロン(堀江貴文イノベーション大学)というサービスがある事を知り、いてもたってもいられず入会をしました。月々約1万円、年約12万円、当時オンラインサロンという概念も浸透していない中このサロンに入っている人は絶対にオモシロイ人が多いはずだ!というオモシロイ人探しの感覚で入りましたが、当時の自分としては、大冒険のチャレンジでした」
※堀江貴文イノベーションサロンとは2014年からスタートした、堀江貴文による会員制コミュニケーションサロン。「ビジネス」そして「働くこと」この言葉によって繋がった起業家や投資家、ビジネスマンや技術者などが集い、情報交換や交流を行う場です。オンライン、オフラインの様々なコンテンツでの交流を行っています。horiemon.com
「そこで、私は思いきってホリエモンに直接、『飛騨で何かがしたい』『場のいいもので何かをしたい』いう想いをぶつけてみました。その結果『くそつまらん。今何かがあるから、それを使って何かビジネスをしようは失敗するわ。』いう今まで聞いた事の無い辛辣でストレートな答えを浴びせられました。正直ショックだったことは記憶していますが、ここで落ち込まなかった当時の自分は考えをガラリとかえようと思いました。成功している人は何か場所や資源があるから何かやるというよりは、本当にこれがやりたいから、それにあった場所や資源を探してやるんだという逆の考え方になりました」
ホリエモンのオンラインサロンという全く新しい場で、新しい気づきがあり、何よりもアクティブな活動をする仲間との出会い、彼らから受ける刺激が森さんにとって大きな転機となったそうです。サロンでの密度の濃い経験を通し、3つの新しい事業がスタートしました。
①何もないが全部ある。正真正銘 ヤバイ無人島「ヤンバルコビト」
沖縄の無人島屋那覇島を日帰り、もしくは宿泊体験するアクティビティ提供行う。
【社名】株式会社ヤンバルコビト
沖縄県中頭郡読谷村楚辺1922-1-10
②LEGOでおぼえるプログラミング教室「manabi-ba(マナビバ)」
レゴ社と提携し、レゴを使ったプログラミング教育を子供向けに行う教育事業。
【社名】合同会社manabiba
岐阜県高山市石浦町7-380-3
③世の中の最高にオモシロイを発掘 究極のバズらせ屋 編集&プロデュース「波の上商店」
編集者の箕輪厚介さんとの共同経営会社。情報を発信していく会社として2017年設立。
「一見別々の事業の様ですが、実は全部自分の中では繋がっています。“無人島”は面白い人と繋がるツール、“波の上商店”はそのオモシロイ人の事をバズらせるPRツール、“manabiba”は将来のオモシロイ事をする子供達への教育の場を提供する会社だからです。自分の強みはどんな人とも繋がれる事だと思っています。そして、日本中にはスゴイ人が一杯いる。そんな人と繋がりながら新しいビジネスをつくっていきたい」
そう話す森さんは、新しい人脈を広げる事で、“この人”と“この事業“をしたいという出会いを経験し、今より多くの事業を展開していきたいと語っています。
「飛騨には優れた人が多いし、やさしく素直な人が多いと感じています。でもちょっとマネタイズ(ビジネスにしてお金にする事)が苦手な部分があると思っています。そんな人たちに寄り添って、埋もれた人材や隠れた才能を活かす手伝いができるようになるといいと思ってます。」
そう語る森さんは、現在培ってきている色々な人脈を、騨でも活かしたいと考えているようです。
「飛騨が自分の地元というのはとても強く感じていて、でも飛騨に縛られることなく色々オモシロイ事をオモシロイ人とつくりあげていきたいと思っています。それがひいては巡り巡って、飛騨から企業家を増やすような事で恩返しができたらいいなって思ってます」
そう楽しそうに語る森さんは、これからもやりたい事がドンドンでてきているようです。
地縁が強いと思われている3代目でも、地域外のことや家業とは違うことをどんどんやってもいいんだ、という気にさせてくれる森さんの動きにこれからも注目です。