[Vol.08]日本で最も美しい村の中にある桃源郷。住民たちが心地よく暮らす、西村地区のコミュニティとは

吉永さんの近所にコミュニティスペースをつくった : 小池澄雄さん、二村彦美さん

吉永さんの近所にコミュニティスペースをつくった : 小池澄雄さん、二村彦美さん

下呂市馬瀬村の西村地区、ここには「里山ミュージアム」という日々の暮らしを野外博物館に見立てた取り組みがある。吉永さんはツアーガイドとして西村地区を案内するが、途中で立ち寄るのが炭焼き小屋の「彦ちゃんハウス」だ。今ではツアーで立ち寄るだけでなく、地域住民の交流の場にもなっているという。この小屋のオーナーである二村彦美さん(通称、彦さ)と西村区長の小池澄雄さんに、地域でコミュニティが広がるまでの歴史と、そこに入ってきた吉永さんたちとの関わり方を聞いた。(※吉永さん夫妻についての記事はこちら)

7つ離れた先輩も、酒を飲めば仲良くなる

小池さん
「彦美さんとは7つも年が離れているので、実は地域内で一緒に何かをやるということは少なかったんです。平成20年に、ホタルを呼ぶためのビオトープづくりのときに、田んぼを整備したり水車をつくったり、一緒に作業をすることになりました。いま思えば、それが仲良くなったきっかけですね」

「その後、平成22年に森林の間伐と獣害対策のための景観整備を行ったのですが、そのときに『気軽に交流ができる場づくり』をしたいという提案がありました。ここには間伐材もたくさんあるし、それを使ってみんなが集まれる小屋をつくろうという話になったんです。それで、8か月ほどかけてできたのが彦ちゃんハウスです。ほとんどの人が建築経験があるわけではなかったので、みんなで試行錯誤しながらの制作でしたね」

二村さん
「移住してきた吉永さんとは、彦ちゃんハウスをつくっていく途中で出会ったのですが、吉永さんたちが暮らしの中で困ったことがあったりすると、いろいろと相談に乗ることもありましたね。当時は週に1回は飲んでいたので、そういう場での話も多かったです」

小池さん
「お酒が入ると一気に距離が縮む。まずはお互い話さないと。祭りのときなんかは『おし祭り』といって、人の家に上がって飲むことも多いのですが、今はそういったことも少なくなってしまった。昔のような気軽な集まりがあるといいね、とみんなでよく話していました」

日本で最も美しい村連合の加盟と里山ミュージアム構想。進化を続けるコミュニティ

馬瀬村は、平成19年に日本で最も美しい村連合に加盟した。日本で最も美しい村とは、日本の農山漁村の景観・文化を守りつつ、村としての自立を目指す運動のことである(引用:日本で最も美しい村連合とは(リンク))。さらに、西村地区では里山ミュージアム構想を進め、地域内を歩くグリーンツーリズムに取り組んでいる。あたらしい取り組みにも積極的な地域だが、それによってコミュニティが変わってしまうことはないという。

小池さん
「馬瀬村を訪ねてくれる旅行者が増えたり、吉永さんのように移住者の方が来てくれることは嬉しいです。皆さん、この地区らしい素朴な文化や暮らしを楽しんでくれている。でも、彼らが来たことで大きく何かが変わったかというと、そんなことはないんです。小さな地区なので、昔からの付き合いをきちんと大切にしたい。そこに誰が入ってきてもコミュニティは変わらずにある、ということを尊重していきたいと思っています」

現在、西村地区の人口は49世帯150人ほど。そこに吉永さん夫婦が入ってくれたことはとても嬉しい、と小池さん、西村さんは口をそろえて話した。もともと、馬瀬全体としては、以前はよそから来る人たちに対してあまりオープンではなかったというが、少しずつ、地域として移住者を歓迎したいという気持ちの変化があったのは、里山ミュージアムができ、西村地区を歩く旅行者が増えたことが大きいだろう。

二村さん
「今後は、馬瀬ならではのものを活かした産業や観光を発展させていければと思っています。今は下呂市も観光資源として注目され始めています。そこから馬瀬まで来ていただいた方は、川や山の美しさに感動することもあるのですが、本当は地域の方のおもてなしが何よりも嬉しいのかな、と感じています。私たちは、何か変わったことをするわけではないですが、地域の人たちと心地よく暮らすことや、そこを訪れる人たちをもてなすことを大切に続けていきたいですね」

日本で最も美しい村連合の加盟から10年、里山ミュージアム構想から4年が経ち、先進的な取り組みには寛容な地域だ。ただし、あくまでもベースにあるものは地域の人々の暮らしだと話すふたりからは、持続的なコミュニティのあり方を改めて教えられた気がした。西村地区の皆さんがつくってきたコミュニティは、大きな木のようにどっしりと根を下ろし、時間をかけて枝葉を伸ばしていく。これから、昔から変わらない繋がりの強さを持ちつつ、地域ならではの新しい取り組みも取り入れながら、成長を続けていくのだろう。

住むことで、里山の魅力を感じる

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