飛 騨未来の地域編集部準備室

自分たちで出来るところから始めてみる。 飛騨で空き家を活用、セルフリノベーションで作る新しい居場所

ここ数年、飛騨(高山市・飛騨市・下呂市・白川村)でも、移住者(I・Uターン者)が空き家や空き店舗を自分たちの手で改修するセルフリノベーションで作ったお店や場所が増えています。手間も時間もかかりますが、その場所や建物にじっくりと向かい合いながら、自分たちで出来るところから始めてみる。実際に飛騨に移住し、セルフリノベーションでお店を始めたおふたりにお話を伺いました。

タグ

文・写真:横関 真吾

【1】

【Iターン・高山市】

高山市八軒町で居酒屋「えん卓」を経営している野口雄也さんは、東京生まれの東京育ち。飛騨に移住して4年。

えん卓は塩手羽や塩辛じゃがバターが人気のメニュー。カウンターも含め、20名ほどが入れる小さくアットホームな雰囲気の居酒屋です。

東京のカフェや居酒屋で働いていた野口さんが、これまでの経験を生かし飲食業で自分のお店を開きたいと思ったとき、最初に浮かんだ候補地が、奥様である裕美さんの実家がある高山でした。
「最初のチャレンジの場として高山を選んだ理由は、何度か妻の実家を訪ねているうちに、落ち着いた雰囲気で自然豊かな高山の環境に良い印象をもっていたからです。ずっと東京に暮らしていたので、四季がハッキリしていて、冬には雪が降るなんてこっちでは当たり前のことも魅力に感じました。

また初期費用をいかに抑えるかと考えると、人件費や家賃が都会より安く、興味のあったセルフリノベーションでお店を作ることで更に開業へのリスクを下げることが出来ると思いました」

  

これからの人生を過ごす場所、今までの経験を元に挑戦してみたいこと、その2つをバランスよく叶えられる場所として野口さんは高山を選び、そのための物件探しを始めます。東京に住んでいたので物件はネットで探し始め、半年がたった頃、知人の紹介で所有している今の建物を使えることになりました。

 

「しばらく空き家になっていて、床もぬけていたし、トイレも汲み取り式だったりと、ボロボロな状態でした。水回りの工事はプロにお願いし、あとは妻のお父さんがDIYに詳しかったので、教えてもらいながら。壁は漆喰を自分たちで塗ったり、飾る絵がなければ自分たちで書いたり、家族で楽しんで一緒に作りました。カウンターも手作りなんですよ」

なんでも新しく購入するのではなく、元々そこにあったもので使えるものは使い、改修費は出来るだけ最小限に。営業してから足りないものは追加することで、開業時の経費を抑え、もともとの家が持つ雰囲気を残すことも考えました。

 

「もともと道沿いがガラス張りでお店の中が見えるようになっていましたが、外から見えると地元のお客さんが過ごしにくいという噂を聞いたので、目隠しになるよう木の枠を自分で作りました」

時間をかけた手作りのお店が縁をつなぐ

 

3ヶ月の改修を経て、2013年5月にオープン。セルフリノベーションならではの暖かい店内の雰囲気や美味しい料理で地元でも人気のお店に。ホームページには“卓を囲んだ人との縁はやがて大きな円となり卓に返って宴となる”と野口さんの目指すお店のコンセプトが書かれており、お店の雰囲気はまさに「えん卓」という店名に凝縮されています。

 

「このお店で出会ったお客さん同士が仲良くなって、そのあと二次会に行くこともたまにあります。まさに当初思い描いていた、同じ場所でお酒を飲んでそれが宴になってと。そんなとき、ここでお店をやってよかったなーと思います」

 

高山に来てから2人のお子様にも恵まれ、またお店のお客さんからの縁で福祉施設のメニュー作りや料理をお願いされたりと、予想外の新しい仕事まで入り、充実した生活を送っているようです。

【物件/セルフリノベーション】

  • 屋号:居酒屋「えん卓」
  • 築年数:50年(賃貸)
  • 以前の用途:住居
  • 改修費:約100万円
  • セルフリノベーション率:90%

 

【2】

【Uターン・高山市】

高山市八軒町で古道具と雑貨のお店「LOTUS BLUE(ロータスブルー)」を運営している永井美奈子さん。

8畳ほどの店舗にはところ狭しと昭和レトロな雑貨が並び、まるで宝探しのようなワクワク感を味わえます。

大学進学とともに東京へ移り、室内装飾家として活躍していた永井さん。趣味で古いものを集め、友人たちと蚤の市を開催したり、友人のお店を立ち上げる手伝いをいくつもしてきました。

 

「地元で自分のお店をやりたくて戻ってきました。古道具を売る蚤の市をやっていて楽しくなり、こっちに戻るときには、お店をやりたいと思ってコツコツ集めていた雑貨や器が200箱にもなっていました」

  

地元に戻ってからしばらくは木版画を基調とした民芸品を作っている実家の仕事を手伝っていました。

 

「あるとき、弟がこの物件が売りに出ているのを見つけて教えてくれました。実家から近く、以前10年間妹が借りて住んでいたこともあって興味があったんです。この物件にした決め手はレトロ感。3階建てで部屋も多く、お店と住まいを一緒に出来る物件だったこと。今は空いた2階の部屋を展示スペースにして展示会も開催しています」

2013年8月に物件を購入し、実家の仕事を手伝う傍ら、空いた時間でコツコツとセルフリノベーションして、11月にオープン。元々の昭和なレトロ感を残すためにお店とキッチン以外はほとんど改修していません。キッチンの床と天井は業者に頼み、それ以外は永井さん自身で改修しています。こだわりはかなりのものです。

 

「昭和のままで残っているからいい。新しくきれいにはしたくなかった。傷んでいるところを直したり、以前住んでいた方によって今風に改修されていた部分をあえて元に戻したりもしました。改修時の釘も古いものを使ったり、昭和レトロなアイテムに合う家を目指し家具も古いものを集め統一感を出しました」

故郷に新しく出来た仲間が集まる場所に

 

生まれ育った町ですが、久しぶりに戻り、新しい場所を作ることにしたおかげで新しい出会いにも恵まれたそう。

 

「このお店を始めていろいろな人と会えたのね。今すごく仲良くしている友達や大事な人はここを始めてから、フラッと来てくれて、知り合いになったのよ。たぶんお店をやっていなかったら会っていなかったと思います。だから良かったーと思って。時々、お客さん来ないからやめたほうがいいかなーと思うと、“このお店素敵、ワクワクする”と言ってくれるお客さんが来ます。なんなんでしょうね」

 

嬉しそうに話してくれる永井さんを見ていると、この場所がお店という役割だけでなく、周りの人にとっても素敵な場所になっていることが分かります。「以前は働き続ける自分をイメージしていたが、今は少し先の自分のやりたいことをイメージできるようになった。飛騨に戻ってきて良かった」と話してくれました。

【物件/セルフリノベーション】

  • 屋号:LOTUS BLUE(ロータスブルー)
  • 築年数:50年(持家)
  • 以前の用途:住居
  • 改修費:約50万円
  • セルフリノベーション率:95%

飛騨に生活を移す際に、今までの経験を活かし、お店を始めたおふたり。時間をかけて空き家をセルフリノベーションで直し、建物や空間に愛情をかけることで、多くの方から愛される場所になっているようです。無理をしない自分らしい場所づくりを飛騨で始めてみませんか。

*改修費には家具代や商品仕入費は含まれておりません。

【好評連載中】

ページの先頭へ戻る