特集 Feature

移住者を知るみなさんに聞きました

コロカルの飛騨特集に登場している、魅力ある飛騨地域への移住者の方々。
彼らは周りから見てどんな人なのか、移住してから地域にどんな変化があったのか。
同じく飛騨にお住まいの、彼らのことをよく知る方々にお話を伺いました。

Vol.02 弓削さんに羊飼いになることを勧めた夫婦

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羊飼いを勧めた : 牧島竜也さん、あさ子さん

雪の降る日、農村の集落を抜けると、一軒の大きな古民家が見えてきた。手づくりの看板やドア、ところどころを自分たちで直したような暖かみのある佇まい。ここに住んでいるのは、牧島さん夫妻とそのお子さんの幌くん、そして猫のカミーロ。彼らの暮らす場所は、古民家の横にツリーハウスがあり、羊がいる、なんとも魅力的な場所だった。弓削さん夫妻が羊を飼うことになったのは、どうやら彼らに関係があるらしい。自分たちの考えと弓削さんたちの考えに似ているところがあるという牧島さんたち、この地域でどのように暮らしているのかを聞いてみた。

海から山へ、移住先を求めて

「僕はもともと茅ヶ崎が地元なんですが、飛騨に来る少し前は千葉の鴨川で、改造したバスに住んでいる友人たちと暮らしてたんです。そのときはみんなで家づくりをしたり、小屋をつくったり、毎日何かを手を動かしていて楽しかったですね。ただ、ちょうど結婚することもあって、どこか良い場所がないか日本中を探していて、一番ピンと来たのが飛騨。山の美しさに呼ばれた感じがしました。」

竜也さんはもともと都会で育ったが、2009年にあたらしい暮らし方を探して全国各地を周った。そのときに、あさ子さんと一緒に訪れた飛騨で、見たこともないような美しい景色に心を奪われたそうだ。翌年すぐに移住を決断したが、当時は新しい場所での暮らしに加えて、結婚生活や集落に入ることなどが重なり、日々大変だったと振り返る。

「この家の前をみんなが通るでしょ。そうすると、徐々に仲良くなっていく人は増えるのだけど、やっぱり人との距離感がとても近いのは新鮮でしたね。自分たちの暮らしを心配して毎日来てくれる方がいたり。それこそ、引っ越してきたばかりのころの一番の親友は、89歳のおばあちゃんだったので、早口の飛騨弁をすぐに覚えられました。近所のみんなは親切だけど、やっぱり厳しいところも多いので、そんな状況も楽しみながら日々暮らしています。

いろんな人が遊びに来てくれる家ということもあり、竜也さんたちの暮らしは飛騨でも有名になっていった。住み開きのような暮らし方をしていることもあり、少しずつ遊びに来てくれる人は増えて行ったという。そして、移住してしばらく経ったころ、同じ国府町に住む弓削さんたちと出会う。

突然の羊飼い宣言と、巻き込まれた弓削さん

「ある日、『羊飼いになりたい!』と思い立って自宅で飼い始めたんですが、自分以外にも近所で飼ってくれる人が欲しかったんです。たとえば、旅行に行くときに世話をしてもらったり、自分たちはオスを飼っているから、誰かにメスを飼ってもらえれば増やせるなと。

ちょうどその頃、ツリーハウスをよく見に来てくれていた一平君と仲良くなったんですが、なんとなく『お、こいつは羊飼ってくれそうだぞ!』と思って誘ってみたんです。羊飼いはいいぞ、と彼と何度か話しているうちに、あっという間に飼うことが決まりました。」

現在はともに、羊を飼い、ツリーハウスをつくり、自由な暮らしを楽しんでいる。ただ、自由ではありつつも、集落の行事にも積極的に参加し、地域に溶け込んだ暮らし送っているようだ。そんな暮らし方だけを切り取っても似ている家族だが、彼らには本質的な部分での共通点があった。

教育の本質

「お互い趣味が似ていたのもあるけれど、何よりも教育に関する考え方が近いのかな、と思いますね。自分はこれから、子どもたちがやりたいことを尊重できる学校をつくっていきたいと思っています。たとえば、放っておくとみんな違うことをやる子もいるけれど、その子の感性を尊重したいという部分は自分の教育の根幹にあって、そのへんは一平君たちと似ているのかもしれません。

ざっくりといえば『好きなようにやらせておけばいいんじゃないか』ということを大切にしたいと思っています。子どもたちが絵を描かずに落とし穴をつくっても、虫を捕まえに行っても、何をやっていても一生懸命なことが大切で、むしろ、そういう子の感性が面白い。その子なりに工夫することが本質的なのかなと感じますね。」

『好きなようにやらせておく』というのは、なかなか難しい。子どもをアートスクールに通わせる親としては美術の成績をあげてほしい、だから絵が上手に描けるようにと望む人もいる。子どもたちに任せて、のびのびと好きにやらせてしまっていいのかどうか、悩ましいところもあると言う。ただ、牧島さんも弓削さんも、葛藤はありつつも、子どもの意志を尊重することを大切にしたいと考えている。

「2017年、一平君たちとは羊の交配をできればという話をしています。あとは、大きな牧場をつくって、いずれダチョウも飼いたい。動物がたくさんいる牧場など、彼らと一緒に何かしらできたらと思っているところです。広いところで羊を連れて歩くというイメージは湧いているけど、どうやって実現するかはこれからですね。」

牧島さんも弓削さんも、イメージを持ってから実行するまでが早い。もちろん周囲の理解があってこそだが、そのベースになっているのは、なんでも試してみる暮らしと、子どもの意志を尊重した教育だった。彼らの型にはまらない生き方に興味を持ち、訪れる人はこれからも増えていくだろう。

これからは教育も選ぶ時代

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