飛騨地域は今、盛り上がりの兆しを見せています。
各世代で、それぞれのコミュニティを起点としながら新しいムーブメントが起き始め、これまでになかったチャレンジを目にする機会が増えてきました。
そんな中、10代の若者による新しい試み、学生団体「HIDAKKO PROJECT」に注目が集まっています。
きっかけは、2016年8月に開催された飛騨を語り合うイベントでした。そこに参加した2人の女子高生の熱い想いによって、飛騨初の学生団体「HIDAKKO PROJECT」が発足することになりました。
2016年12月、初めての活動としてフリーペーパー「HIDAKKO」を創刊。企画や資金集め、取材やページデザインに至るまですべて自分たちの手によって成し遂げました。創刊を記念したイベントには多くの人が集まり、多くのメディアにも取りあげられました。
現在2期目となる「HIDAKKO PROJECT」。代表は高校2年生の瀬ノ上紗帆さん(17歳)、副代表は高校1年生の鈴木日菜子さん(16歳)。総勢14名の個性的なメンバーによって構成されています。
10代の若者が始めた新しい取り組み。について、代表・副代表の2人に話を伺いました。
まだまだ可能性に溢れた高校生。そんな二人が考えるHIDAKKO PROJECTの目的やこれからの展開は、一体どのようなものなのでしょうか。
-HIDAKKO PROJECTは、どんな目的をもって活動をしているのですか?
(瀬)「飛騨の魅力を伝えるというのが大きな目的の一つですが、それ以上に、飛騨に住んでいる中高生に対して影響を与えたいと思っています。飛騨の中高生にもっといろんな世界があることを知って欲しい、選択の幅を増やしてほしい。自分と同じような感覚を皆と共有したいです」
(鈴)「私も同じ感覚です。中学生の頃、学校の世界の狭さをすごく感じていたんです。その窮屈さが本当に嫌いで(笑)。小さなコミュニティにとらわれずもっと大きな視野でものごとを見てほしいと感じていました。そんな感覚を共有できる人が増えたら嬉しいなと思っています」
-HIDAKKO PROJECTは、これからどんな活動を行っていきたいですか?
(瀬)「いろんなイベントの開催をしたいと考えています。やっぱり私がこれまでに影響を受けてきたのは、何かのイベントであることが多いんです。私たちの団体が主催することで中高生が参加しやすくなり、より若者同士が繋がれるんじゃないかと思います」
(鈴)「フリーペーパーはあくまで、私たちの想いや活動を多くの人に知ってもらうためのきっかけだと思っています。本当に伝わるのは、やっぱり直接会って話すこと。イベントで実際に話を聞いたり相談できたりしたら、フリーペーパーではできないような感動や衝撃を与えられると思っています」
フリーペーパーの発行はあくまで自分たちの活動を知ってもらうためのひとつのツール。これから彼女たちは、主催するイベントを通して同じ感覚を持つ中高生を増やしていきたいと語ります。
HIDAKKO PROJECTは、すでにいくつかのイベントを主催している。
とはいえ、多感な女子高生。地方での暮らしは刺激も少なく、物足りなさを感じているのではないでしょうか。飛騨という地域についての率直な思いを聞いてみました。
-都会への憧れはありますか?
(瀬)「私は特に強い憧れはないんです。飛騨は本当に居心地が良くて、このゆったりした空気感が昔から大好きなんです。HIDAKKO PROJECTを始めるまでは、都会の高校生たちによる学生団体やその活動に強い憧れもありましたが、自分たちがこの団体を始めたことによって、今この場所で活動していることにとても満足できるようになりました」
(鈴)「私は、都会に対して強い憧れがあります。その憧れによるハングリー精神が今の私をつくったとも言えます。でも、高校に入学してすぐに魅力的な先輩に出会って、この団体をつくることになって。今は高山が大好きになりました!都会にないものがここには沢山あると気付いたし、このハングリー精神も高山にいたからこそ養われたものだと思います。今は飛騨に生まれてよかったと思っています」
-飛騨という場所について、どう思いますか?
(瀬)「人の優しさをすごく感じます。この団体の活動を通して出会う大人たちが、自分たちのことを本当に応援してくれる。とても嬉しいし、あたたかさを感じます」
(鈴)「良くも悪くも狭い街だと思います。でも、今はこの活動を通して本当に飛騨を好きになりました。昔は大人になったら都会に住みたい!と思っていたけれど、今はもしかして飛騨に住むのもいいなーなんて考えたりもします」
-10年後、飛騨がどんな街になっていたら良いと思いますか?
(鈴)「ずっと大好きと言える街であってほしい。将来どこに住んでいるかは分からないけれど、どこにいても飛騨に生まれてよかったと思いたいです。そして10年後の中高生にも、飛騨を好きだと言ってほしい。できるだけ多くの子に、飛騨は住み心地が良い場所だと思ってほしいんです。映画館がなくたって飛騨が好きだと言ってほしい!(笑)」
(瀬)「自分にとって好きなことを、思う存分できる街だったらいいなと思います。自分で主体的に何かを起こす人たちが増えていたら嬉しいなと思います。また、飛騨出身じゃない人にとっても、『帰りたい場所』であってほしいです。あの人に会いたいからという理由で飛騨に来てもらえたら嬉しいし、私自身がその役割を担って誰かを呼べるような存在でありたいなとも思います。自分の魅力が飛騨の魅力へとつながっていく、そんな形が理想です」
意欲に溢れ、わくわくした表情で将来のことを語ってくれる2人。この先、どのような人生を歩んでいきたいと考えているのでしょうか。
(瀬)「私の夢は、世界中の出会った人すべてに、おもてなしをするということです。言語だけじゃなく、異文化への理解なども含めて、おもてなしの心で対応していきたいと考えています。どんな職業についたとしても、出会った人を笑顔にさせたいですね!」
(鈴)「地方の中高生、世界の中高生たちに影響を与え続けたいです。将来大人になってからも、それが続けられたらいいなと思います。若い人たちがチャレンジするきっかけや環境づくりをしていきたいし、それが何かの形でビジネスにできたらいいなと思います」
それぞれに、自分の存在や立脚点をきちんと意識した上での「将来ありたい姿」だと感じました。共通しているのは、自分たちが誰かにとって「いい影響」を与える存在でありたいということ。高校生らしからぬ広い視野を持っていることに驚いてしまいます。
素朴でキュートな2人の女の子は、少し照れながらも、しっかりとした口調で丁寧に話をしてくれました。「これから飛騨の未来をつくっていくのは私たち」。そんな静かだけれど熱い想いを感じる時間でした。
彼女たちは、まだ発展途上です。自分の中にあるものをなんとか形にしようと、ひとつひとつ試行錯誤しながら取り組んでいます。その姿はまさしく「未来」そのもの、眩しいくらいにキラキラとした可能性に満ちています。
これからも彼女たちの活動から目が離せません。